なぜ、今「防災食」について親子で考えるべきなのか?

日本は地震、台風、集中豪雨など、様々な自然災害に見舞われる国です。いつ、どこで、どれほどの規模の災害が発生するかは予測できません。ライフラインが止まり、支援物資が届くまで数日かかることも珍しくありません。

私たちは「もしも」の時に、家族の命を守るための準備をしておく必要があります。その中でも、最も基本となるのが「食料の備蓄」、すなわち「防災食」です。

成長期にある子どもたちにとって、非常時に空腹や栄養不足の状態が続くと、身体的なダメージだけでなく、精神的な不安も大きくなります。安心感を持って非常時を乗り切るためにも、「食べ慣れたもの」「栄養価の高いもの」を備蓄することが、子どもたちの心の安定を保ち、次に進む力を持たせてくれると信じています。

非常時を生き抜くための防災食:基本の「き」と「備蓄のゴール」

防災食の備蓄において、必ず押さえておきたい基本ルールと、目指すべきゴールについて確認しましょう。

備蓄の基本ルール

  • ① 最低3日分、できれば7日分: 災害発生からライフラインの復旧や支援物資の配布が本格化するまでの間(約3日)を自力で乗り切る分、さらに余裕をもって7日分を備蓄することが推奨されています。
  • ② 水と食料はセットで: 飲料水は一人一日3リットルを目安に備蓄しましょう。
  • ③ 火を使わずに食べられるものを中心に: 電気やガスが止まることを想定し、缶詰やレトルト食品、そのまま食べられるお菓子などを選びます。

上記の備蓄日数や水の量の目安は、主に内閣府(防災担当)や農林水産省などの公的機関が推奨しているものです。

備蓄のゴールとは?

単にカロリーを摂取するだけでなく、非常時だからこそ「栄養価」と「心の安心感」を大切にしたいものです。

  • 栄養価: 特にタンパク質、ビタミン、ミネラルなど、体調を維持するために重要な栄養素が摂れるもの。
  • 安心感: 子どもが普段から食べ慣れているもの、好きなものを混ぜることで、非常時のストレスを和らげることができます。

この「栄養価」と「安心感」の両方を満たす優等生こそが、長期保存可能な「缶詰」なのです。

「ツナ缶」しか知らない子どもたちへ:さば缶のイメージをチェンジ!

食育スクールで、さば缶を使うレッスンが行われましたが、さば缶を家でも使っていると教えてくれたお子さまはほとんどいませんでした。(スクール生約80名)「さば缶?知らない」「ツナ缶なら見たことある」という声がほとんどでした。

実際、お母様方からも「どう使ったらいいか分からなくて、あまり買わない」というお声を聞きます。さば缶は、多くの家庭で「まだ手を出さない食材」というイメージがあるようです。

しかし、非常食としてはもちろん、日常の食卓においても、さば缶はツナ缶に比べて圧倒的なメリットを持っています。

ツナ缶 vs. さば缶:栄養差

缶詰主な栄養素特徴的な脂質特徴・活用課題
ツナ缶タンパク質・ビタミンE少ないあっさりしていて使いやすい。親近感がある。
さば缶タンパク質、カルシウム、ビタミンDDHA、EPA魚特有の風味がある

鯖に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、「必須脂肪酸」と呼ばれ、人間の体内ではほとんど作ることができません。これらは脳の発達や記憶力の維持、血液をサラサラにする効果があるとされており、特に成長期のお子様の体と心を守るために、非常に重要な栄養素です。

缶詰は、骨ごと調理されているため、普段の食事では不足しがちなカルシウムも丸ごと摂取できる優れものです。成長期である子どもたちにとって、カルシウムを摂れる食材はとても大切な存在です。

実際に、骨が簡単に砕ける様子を見て、「すごーい!」「これなら食べられるね!」と驚いていたスクール生もいました。

さば缶から子どもが学べる!3つのすごいメリット

メリット1:生きるための「強力な栄養素」を学ぶ

  • 学べること: 非常時でも体の成長を止めないために、タンパク質や良質な脂質を摂ることの大切さ。
  • さば缶の役割: さば缶一つで、体を動かすエネルギー源(脂質)と、強い体を作る材料(タンパク質)を効率よく摂取できます。DHA・EPAは、非常時の不安な気持ちにも負けない、脳の健康をサポートします。

メリット2:食べ物を「無駄にしない」知恵を学ぶ

  • 学べること: 保存期間の長い防災食を、日常で美味しく食べる「ローリングストック」の習慣。
  • さば缶の役割: 備蓄した防災食は、賞味期限が来る前に普段の食事として食べ、食べた分を買い足して備蓄を維持する**「ローリングストック」が基本です。さば缶は味噌煮や水煮、醤油煮など味のバリエーションが豊富で、日常のおかずやご飯にアレンジしやすい万能食材です。普段から食べることで「慣れた味」となり、非常時にも安心して食べることができます。これは、「フードロスを防ぐ」という大切な食育にも繋がります。

メリット3:火を使わない「調理」を学ぶ

  • 学べること: 火や電気を使わなくても、安全に食事の準備ができる知識と経験。
  • さば缶の役割: さば缶は開けてそのまま食べられるため、子どもでも安全に、おにぎりの具や混ぜごはん、クラッカーのトッピングにできます。非常時には、大人が他の作業をしている間に、子どもが自分で食事の準備を担うことができます。この経験は、「自分のことは自分でやる」という自立心と、非常時における「協働の精神」を育みます。

そして、こんな素敵な考えもきくことができました。

さば缶の中は、ごろッとしていて分けて食べられるから、自分が食べられる分、必要なぶんだけ他の人と分けることが出来るね。 (小1女の子)

骨まで食べられるってことは、ごみも出ないってことだよね。人にもやさしくて、地球にも優しいね!(小2女の子)

これならできる!さば缶攻略最初のステップ

さば缶へのイメージを変えるには、まず、食卓に出してみることが重要です。さば缶の栄養価を最大限に生かしつつ、お子さまが喜ぶ簡単なアレンジ方法をご紹介します。

混ぜるだけ!さばマヨおにぎり(水煮缶)

  • 作り方: 汁気を切ってほぐした鯖に、マヨネーズと醤油少々を混ぜて、ご飯と握るだけ。ツナマヨを置き換えるだけで、栄養価が格段にアップします。
  • 食育ポイント: 「さばの骨はどこかな?」と探してみる(水煮は骨まで軟らかいので食べられます)。骨を認識したうえで、「食べられる」ことを経験すると、「骨があるから魚が嫌い」を克服できる可能性も!

味付きを使ってみる!(味噌煮缶)
さばの味噌煮は馴染みがあるというご家庭も多いのではないでしょうか。どんな味付けにしたらいいか分からない。という悩みの解決に、「味噌煮缶」を使うこともおすすめです。

備えは「心の余裕」と「家族の絆」

防災食の備蓄は、単にモノを揃えることではありません。それは、「もしも」の時に「このさば缶があれば大丈夫」という心の余裕を生み、家族で協力して生き抜く「家族の絆」を深める行為です。

さば缶は、長期保存、高栄養価、調理のしやすさという三拍子揃った、まさに防災食の優等生です。「ツナ缶の仲間」として食卓に迎えることで、無理なくローリングストックを実践し、子どもの栄養と成長を支えることができます。

この機会に、ぜひお子様と一緒にさば缶を開けて、その栄養の秘密と、非常時に役立つ使い方について話し合ってみてください。備えは、明日への安心に繋がります。

今回学んだ「栄養価の高いものを選ぶ力」や「火を使わずに工夫する力」は、すべて「こどもの食育」を通じて感覚的に身につけることが出来ます。

子どもの食育スクールでは、さば缶を使ったアレンジレシピのように、普段はあまり使わないけれど、実は奥が深く学びが深まるテーマを扱います。

防災も食育も、日々の小さな積み重ねが大切です。「もしも」の時を乗り切るための「生きる力」は、食育スクールでの体験を通して、楽しく身につけることができます。

「食」から子どもが学べることは無限大です。ぜひご家庭での話題にあげてみてはいかがでしょう。

石井千賀子/薬剤師

幼少期から母の手料理や自然の恵みに囲まれて育ち、食の豊かさを肌で感じてきました。その経験から、料理を通して、子どもたちが自ら考え、選び、行動する力の育成を大切にしています。未来を生きる子どもたちの「思考力」や「決断力」を育み、自分の道を切り開けるように心を込めてサポートいたします。