もうすぐお正月。
お正月や行事食として、日本の食文化に深く根付いている「お餅」。
一方で、毎年この時期になると必ず耳にするのが、お餅による窒息事故のニュースです。

運営する食育スクール「青空キッチン久が原校」では、12月の最後に「博多雑煮」のレッスンがありました。1人1つ、お餅を用意しましたが、幼児さんでは半数以上、小学校低学年でも「お餅を食べたことがない」「食べさせるのが不安」という子どもからの声、保護者様の声を聞きました。

「お餅って食べられるんですね」

そう驚く保護者様もいました。そのくらい、お餅は危ない。というイメージがついているんだな。と感じました。

結論からお伝えすると、
お餅を食べられる年齢について、公的機関が示す明確な「〇歳からOK」という基準は存在しません。
※小児科学会や、消費者庁などから「ガイドライン」がでていたり、注意喚起があります。

重要なのは、
「幼児だけでなく、全年齢において注意が必要」
とされている点です。

これは、「〇歳を過ぎれば安全」という考えが成立しないことを示しています。

なぜお餅は幼児にとって危険なのか

お餅が危険とされる最大の理由は、食べ物としての性質にあると考えられます。

1.粘着性が非常に高い

加熱されたお餅は、
・歯
・舌
・喉の粘膜

強く張り付きやすい特徴があります。
一度喉に詰まると、咳反射だけで排出することが難しく、気道を完全に塞いでしまうリスクがあります。

2.飲み込みやすい大きさになりやすい

柔らかく伸びるため、幼児が十分に噛まずに飲み込んでしまうことがあります。
これは「噛めない」のではなく、
「噛まずに飲み込めてしまう食材」であることが問題です。

3.幼児の嚥下機能は発達途中

日本小児科学会は、乳幼児期の子どもについて
・咀嚼機能
・嚥下機能
・誤嚥を防ぐ咳反射
まだ発達途中であることを指摘しています。
そのため、粘着性が高く、形状が変化しやすい食品は、特に注意が必要な食品に分類されます。
https://www.jschild.med-all.net/Contents/private/cx3child/2021/008003/026/0344-0347.pdf

これら難しいことを子どもに伝えるのは少し難しかったりもします。

「おもちはね、お口の中でベタッてくっつきやすい食べものなんだよ。」
「だからね、よーくかまないと、のどにピタッてくっついちゃうことがあるんだ。」

「やわらかいから、かまなくてもスルッていけちゃうんだけど、
それがいちばんあぶないんだよ。」

「ちゃんとかんで、小さくしてからじゃないと、のどがびっくりしちゃうんだ。」

「〇〇ちゃんの体は、どんどん大きくなってるけど、
のどやお口は、まだ練習中なんだよ。」

「だから、おもちは大人みたいに食べるのは、もう少し先ね。」

こんな声掛けで、子どもに注意を促せるといいですね。

公的機関で「○歳」と決められていないが、それでも「3歳ごろ」と言われる理由

発達の目安としての「3歳」

3歳前後になると、一般的に以下の力が育ってきます。

  • 奥歯が生え揃い始める
  • 噛み切る力が向上する
  • 一口量を調整できるようになる
  • 大人の指示を理解し、守れるようになる

つまり、安全に食べるための条件が揃い始める時期として、3歳が一つの参考目安とされているのです。

ただし、これはあくまで平均的な目安であり、
3歳でもできる子もいれば、4歳・5歳でも注意が必要な子もいます。

大事なことは「子どもの発達段階」を意識する。ということですね。

食育講師・薬剤師として伝えたい判断ポイント

怖いから食べない選択をする。というのは少しもったいないかな。と子どもの食育講師として感じます。ですので、「食べられる工夫・方法」を探し、実践して、お子さまの経験値はぐっと上げながら、お正月の楽しみも増やしてほしいなと思います。

1.噛む力が育っているか

  • 繊維のある野菜
  • ある程度の弾力がある肉

前歯だけでなく奥歯で噛めているか
日常の食事の様子が、最も信頼できる判断材料です。

2.食べ方をコントロールできるか

  • 一口が大きくなりすぎない
  • 「よく噛んでね」という声かけが通じる
  • 食事中に立ち歩いたり、遊びながら食べない

これらは、事故予防に直結する重要なポイントです。

3.大人が必ず見守れる環境か

食文化を守りながら、安全に伝えるために

お餅は、日本の素敵な伝統食です。
「危ないから完全に排除する」のではなく、
子どもの発達と安全を最優先にしながら、どう関わるかが食育の視点です。

  • お餅をつく様子を見る
  • 行事の意味を知る
  • 家族で食卓を囲む雰囲気を味わう

「食べる」以外にも、食文化を伝える方法はたくさんあります。

そして、子どもは食べたい意欲はあるけれども、親として難しいと判断した場合、

「〇〇ちゃんのおくちと、のどは、いま練習ちゅうなんだ。」
「おもちは、くっつきやすいから、まだむずかしいんだよ。」

「ちいさく切るの、てつだってくれる?」
「〇〇ちゃんは、おもちじゃなくて、これならたべられるよ。」

子どもに代替案の提示もおすすめです。

大根もち: 繊維があり、お餅ほど伸びないので噛む練習に適しています。

お麩(ふ): 柔らかく煮るとトロトロになり、安全。

ジャガイモやかぼちゃの団子: 片栗粉を少なめにして作ると、粘り気が抑えられます。

もしもの時の応急処置(薬剤師・医療の視点)

背部叩打法(はいぶこうだほう): 1歳以上の子供への具体的なやり方(肩甲骨の間を強く叩く)。
日本小児科学会・日本小児救急医学会:「こどもの救急」窒息の応急処置
政府広報オンライン:赤ちゃんやこどもを誤飲・窒息事故から守る!

119番通報のタイミング: 少しでも様子がおかしければ迷わず呼ぶこと。

掃除機は推奨されない: 以前は言われていましたが、現在は口内を傷つけるリスクや効果の不確実性から、公的な救急ガイドラインでは推奨されていません。
日本赤十字社:お餅を喉に詰まらせたら? 正しい対処法を知ろう!

子どもの「食べたい」という意欲は、育てていきたい力です。
たとえ安全面から食べさせられない場面であっても、その気持ちを否定せず、理由を体の成長と結びつけて伝えることで、子どもは「食べることは楽しい」「また挑戦できる」と感じ続けることができます^^
今食べない選択をしても、また来年、安心して食べられる楽しみが残るように。
そして、食べられたらばまた次に「食べたい」と感じられる経験になるような。

そんなお餅との付き合いかたができますように。

執筆者:石井 千賀子(いしい ちかこ)

薬剤師。昭和大学薬学部卒業後、昭和医科大学、調剤薬局に勤務。医療現場での経験と、子育てを通じて得た実感をもとに、食と生活習慣が子どもの学びや心身の土台をつくることに着目。現在は食育スクール運営のほか、科学的根拠に基づきながら医療・教育・食を横断する立場から保護者に寄り添うコラム執筆やセミナーを行っている。

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