中学受験が近づくと、多くのご家庭が気にされるのが「体調管理」です。
どれだけ準備を重ねてきても、試験当日に体調を崩してしまえば、本来の力を発揮することは難しくなります。

一方で、

・何を食べさせればいいのか
・サプリメントは必要なのか
・風邪をひかせないために、どこまで対策すべきか

情報があふれる中で、かえって不安が大きくなってしまう保護者の方も少なくありません。

私は薬剤師として医療の現場に立ち、食育講師として子どもたちと関わり、そして一人の母として中学受験を経験してきました。
その立場からお伝えしたいのは、体調管理は「特別なことを足す」よりも、「基本的な生活を整えること」こそが最も重要だということです。

受験期に体調を崩しやすいのはなぜか

受験期は、子どもにとって心身の負荷がかかりやすい時期です。

・長時間の学習
・生活リズムの変化
・緊張やプレッシャー
・食事時間の乱れ

これらが重なることで、免疫力や自律神経のバランスが崩れやすくなります。

厚生労働省が公表している「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成長期の子どもに必要な睡眠時間の目安として、
小学生は9〜12時間中学・高校生は8〜10時間 が示されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf

しかし実際には、博報堂教育財団の調査により、
小学生の平均睡眠時間は8時間56分 と、推奨時間に届いていない実態も報告されています。
https://www.kyodo.co.jp/pr/2025-03-10_3923753/

受験期は特に、長時間の塾、勉強を優先するあまり、無意識のうちに睡眠が削られやすい時期です。
この「小さな睡眠不足の積み重ね」が、体調不良や集中力低下につながっていきます。

我が家の6年生も、多くても8時間睡眠でした。※23時就寝6時半起床
早く寝てほしい。と思う反面、こんなにも頑張ってきたんだから息抜きも必要だよね。という気持ちと…難しいですね。

薬剤師として感じる「やりすぎ体調管理」の落とし穴

体調を気遣うあまり、次のような対策をされるご家庭も少なくありません。

・サプリメントを複数取り入れる
・免疫を上げる食品を過剰に意識する
・少しの体調変化にも強い不安を感じる

もちろん、心配する気持ちは自然なものです。
しかし一人の薬剤師としての個人的な考え方としては、サプリメントや健康食品への過剰な意識は不要なのではないか。と思っています。

健康な成長期の子どもに対して、サプリメントが体調管理の中心になるケースは多くありません。

国立健康・栄養研究所(厚生労働省所管)では、
「通常の食事をしていれば、特定の栄養素が不足することはまれ」
という見解が示されています。
https://hfnet.nibn.go.jp/fundamental-knowledg/detail1056/

医療の現場では、サプリメントの併用により
・胃腸の不調
・食欲低下
を招いてしまうケースも実際に見られます。

体調管理は、「何かを足すこと」ではなく、体の土台を整えることが最優先です。

免疫UP!とうたうサプリメント、食品は数多くあり、良いような気がする気持ち、とてもよくわかります!あなただけではありません^^

体調管理の基本

① 睡眠を最優先にする

睡眠は、受験期の体調管理において最も重要な要素のひとつです。

睡眠中、脳では
・記憶の整理
・学習内容の定着
・免疫機能の回復
が行われています。

脳科学の分野でも、睡眠中に学習内容が長期記憶へ移行することが明らかになっています。
つまり、夜遅くまで勉強を続けるよりも、しっかり眠った翌日の学習の方が効率が高いケースは珍しくありません。

受験期こそ、

・毎日なるべく同じ時間に寝起きする
・睡眠時間を大きく削らない

といった「リズムを守る意識」が、体調と集中力の両方を支えます。

○時に寝なさい!と伝えるよりも、理解力が高まっている6年生ですから、適切な理論をもとに、お子さまが得られるメリットと、デメリットを伝え、【妥協点】を決められたらいいですね。塾の先生方も、睡眠の重要性についてしっかりお話くださっていました。

② 食事は「完璧」を目指さない

受験期の食事というと、「栄養バランスを完璧にしなければ」と感じる方も多いかもしれません。
しかし、体調管理の視点では、次の3点が何より重要です。

・決まった時間に食べる
・食べ慣れたものを中心にする
・胃腸に負担をかけすぎない

「これを食べれば風邪をひかない」「集中力が上がる」といった情報は魅力的ですが、日常とかけ離れた食事は、かえって体に負担になることもあります。

また、受験期は緊張やストレスにより、一時的に食欲が落ちることもあります。
これは自律神経の影響による体の自然な反応であり、意志の弱さではありません。
大人だって、心配事がある時には「食欲がないわ」ということ、あると思います。

そのような時は、無理に量を増やそうとするより、
「食べられる形・量」を優先することが、結果的に体調を守ることにつながります。

③ 生活リズムは親が支える

受験期の生活全体を、子ども一人で管理するのは簡単ではありません。
だからこそ、親ができる最大のサポートは、安心できる生活リズムを整えることです。

・起床・就寝時間を大きく崩さない
・食事の時間をなるべく一定にする
・家庭の雰囲気をピリピリさせすぎない

特に大切なのは、親自身が不安を抱え込みすぎないことです。
親の緊張や焦りは、言葉にしなくても子どもに伝わります。

事前に、○時に起こすね、○時にご飯にしようか?とお子さんと一緒に決めておくと、親子間のピリピリもなくなります!

受験期の体調管理で本当に大切にしたいこと

中学受験は、子どもの人生の大切な経験のひとつですが、ゴールではありません。
体調管理の目的は、「完璧にコントロールすること」ではなく、
子どもが安心して力を出せる状態を支えることです。

睡眠、食事、生活リズム。
これらの基本が整っていれば、それは十分な体調管理と言えます。

食育の視点から伝えたいこと

私が食育の活動を通して大切にしているのは、
食事を「管理の道具」にしないことです。

受験期だからこそ、食卓は子どもがほっとできる場所であってほしい。
体調管理に迷ったときは、

「何を足すか」ではなく
「何を整えるか」

という視点を思い出していただけたらと思います。

※この記事について

本記事は、
・薬剤師としての医療的視点
・食育講師としての実践経験
・中学受験を経験した母としての体験
をもとに構成しています。
特定の商品や方法を推奨するものではなく、各ご家庭で再現しやすい「基本的な体調管理」をお伝えすることを目的としています。

執筆者:石井 千賀子(いしい ちかこ)

薬剤師。昭和大学薬学部卒業後、昭和医科大学、調剤薬局に勤務。医療現場での経験と、子育てを通じて得た実感をもとに、食と生活習慣が子どもの学びや心身の土台をつくることに着目。現在は食育スクール運営のほか、科学的根拠に基づきながら医療・教育・食を横断する立場から保護者に寄り添うコラム執筆やセミナーを行っている。すべてのコラムへ