2月のはじめ、日本各地で行われる「節分」。
「鬼は外、福は内」という掛け声とともに豆をまく風景は、多くの家庭にとって季節を感じる大切な行事です。

節分とは?豆まきに込められた日本の伝統文化と意味

節分の由来

節分は本来、季節の変わり目に邪気を払い、無病息災を願う日本の伝統行事です。
古くは立春・立夏・立秋・立冬の前日すべてを指していましたが、現在では立春前日の行事として定着しています
おいしい和食のおはなし

豆まきの意味

豆をまく風習には、「魔(ま)を滅(めっ)する=豆」という語呂合わせや、穀物に宿る霊力で邪気を払うという意味が込められており、食と信仰、暮らしが深く結びついた文化でもあるようです。

しかし近年、この節分の豆まきについて、子どもの安全という観点から注意が必要であることが広く知られるようになってきました。

節分の豆まきで起きている子どもの窒息事故

消費者庁は、節分の時期になると毎年のように
「5歳以下の子どもには、豆やナッツ類を食べさせないでください」
という注意喚起を行っています。
消費者庁からの注意喚起

実際に、煎り大豆やナッツ類を喉に詰まらせ、命を落とす事故が複数報告されています。
節分という「特別な日」に起こる事故だからこそ、毎年繰り返し注意が呼びかけられているのです。

国民生活センターの資料でも、
「豆・ナッツ類は硬く、丸く、滑りやすいため、気道に入りやすい食品」
であることが示されています

【薬剤師の視点】なぜ小さな子どもは豆を詰まらせやすいのか

では、なぜ豆がこれほど危険なのでしょうか。

医学的に見ると、乳幼児は

  • 奥歯が生えそろっていない
  • 噛む力(咀嚼力)が弱い
  • 噛む・飲み込む動作の連携(嚥下機能)が未熟

という特徴があります。

そのため、硬くて小さい豆は十分に噛み砕かれないまま喉へ送られ、
誤って気管(空気の通り道)に入り込む「誤嚥(ごえん)」を起こしやすくなります。

誤嚥とは?気づきにくいリスク

誤嚥は、すぐに強い咳が出ない場合もあり、
・気づかないうちに気管支に詰まる
・後から肺炎を引き起こす
といった可能性もあります。

これは「注意すれば防げる事故」であり、正しい知識を知っているかどうかが命を左右する分野でもあります。

「豆を食べない=文化を壊す」ではありません

ここで大切にしたいのは、
「豆を食べない=節分を否定する」ことではないという視点です。

文化を守ることと、安全を守ることは、対立するものではありません。

むしろ、
「なぜ豆をまくのか」
「なぜ小さい子は食べないのか」
を伝えることこそ、現代に合った文化の継承だと私は考えています。

食育実践家としてすすめたい「安全な節分の工夫」

① 5歳以下の子どもは「食べない節分」を選ぶ

消費者庁が明確に示している通り、
5歳以下の子どもは豆を食べないことが基本です。

「食べない代わりに、行事として参加する」
これが安全と文化を両立させる第一歩です。

② 豆まきは「個包装」や「代替素材」で安全に

・個包装の福豆をそのまま投げる
・紙で作った豆
・布製のボール

などを使うことで、床に落ちた豆を誤って口に入れるリスクを減らせます。

東京都も、家庭での食品事故防止策として
「個包装の活用」「使用後すぐに片付けること」を推奨しています
東京都MYTOKYO

③ 年齢に応じた「関わり方」を変える

節分は、年齢ごとに学び方を変えられる行事です。

  • 未就学児:
     鬼の絵を描く、豆を数える、掛け声を楽しむ
  • 小学生:
     豆まきの由来を調べる、家族に説明する
  • 高学年:
     食べ物(大豆)の栄養や、体の仕組みを学ぶ

「食べる」以外にも、学びの入り口はたくさんあります

節分は「安全に食べる力」を育てる子どもの食育のチャンス

食育とは、栄養の話だけではありません。
「安全に食べる力」を育てることも、非常に大切な食育です。

節分の豆まきは、

  • 食べ物の形状
  • 年齢による体の発達
  • 命に直結するリスク

を、家庭で自然に伝えられる貴重な機会です。

「今日は特別な日だからこそ、特別に気をつけようね」
そんな一言が、子どもにとって一生ものの学びになります。

文化を未来へつなぐために、私たちができること

日本の伝統行事は、形を守るだけでは続いていきません。
今の時代の知識と価値観を重ねながら、アップデートしていくことが必要です。

節分の豆まきもそのひとつ。
文化を大切にしながら、子どもの命を守る選択をすることは、
決して行事を軽んじることではありません。

むしろそれは、
「大切だからこそ、守り方を考える」
という、現代の食育そのものだと感じています。

同時に、危険だからと全てを無くしてしまうことも残念だと感じます。
どうしたら安全に文化や行事を継承し、楽しめるのか。

そう考える時間も大切ではないでしょうか。
ご家族みなさまで行事を安全に楽しめますように。

執筆者:石井 千賀子(いしい ちかこ)

薬剤師。昭和大学薬学部卒業後、昭和医科大学、調剤薬局に勤務。医療現場での経験と、子育てを通じて得た実感をもとに、食と生活習慣が子どもの学びや心身の土台をつくることに着目。現在は食育スクール運営のほか、科学的根拠に基づきながら医療・教育・食を横断する立場から保護者に寄り添うコラム執筆やセミナーを行っている。すべてのコラムへ

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