【管理栄養士・離乳食アドバイザーが伝える】離乳食期の節分はどうする?恵方巻を無理に食べなくていい理由

節分の行事食として定着している恵方巻。しかし、離乳食や幼児食期のお子さんを持つお母さんにとって「海苔は噛み切りにくいのでは?」「丸飲みしたら危ないかも」といった不安はつきものです。
今回は、管理栄養士であり、日々子どもたちに料理を教える食育講師の視点から、1〜2歳のお子さんと一緒に楽しむ「恵方巻風の食体験」について解説します。保存性に優れた日本の伝統食材である乾物を活用し、忙しい働くお母さんでも無理なく取り入れられる食育のヒントをお届けします。
離乳食・幼児食期に乾物を活用するメリット
共働きで忙しい日々を送る38歳のお母さんにとって、毎日の献立作りは時間との戦いです。そこで活用したいのが乾物です。恵方巻に欠かせない海苔をはじめ、切り干し大根や干ししいたけ、ひじき、そして節分の豆まきに使う大豆もすべて乾物の仲間です。
乾物には、子育て世帯に嬉しい3つの特徴があります。
- 保存性が高く、買い置きができる
- 少量から使いやすく、無駄がない
- 旨味が凝縮されており、薄味でも美味しく仕上がる
特に1〜2歳という時期は、味覚の基礎が作られる大切な時期です。人工的な調味料に頼らず、乾物から出る天然の出汁や風味を活かすことで、素材そのものの味を味わう力を養うことができます。
海苔を安全に楽しむための発達段階別ステップ
恵方巻の主役である海苔は、食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富な優れた食材です。しかし、噛む力が未発達な乳幼児にとって、大きなままの海苔は喉に張り付きやすく注意が必要です。
消費者庁のデータによると、食品による子供の窒息事故は家庭内で多く発生しており、海苔のような薄くて張り付きやすい食材も慎重に扱う必要があります。
お子さんの発達に合わせ、以下の工夫を取り入れてみてはいかがでしょうか?
離乳食完了期(1歳〜1歳半頃)
まだ奥歯が生え揃っていない時期です。この時期は無理に巻く必要はありません。
- 海苔をキッチンバサミで細かく刻み、おかゆや軟飯に混ぜる。
- お湯で煮詰めて「自家製海苔の佃煮」にし、風味付けとして利用する。
- 手づかみ食べをしたい場合は、喉に張り付かないよう1センチ角程度の極小サイズにしてご飯にまぶす。

幼児食期(1歳半〜2歳以降)
少しずつ噛む力が強くなってくる時期ですが、まだ大人と同じ焼き海苔は噛み切りにくいことがあります。
- 海苔に小さな穴をたくさん開ける「海苔パンチ」や、フォークで細かく穴を開けてから使うと、噛み切りやすくなります。
- 細巻きよりも、一口サイズの「手まり寿司」や「おにぎり」の形にして、表面に細かくちぎった海苔を散らすスタイルが安全です。
食育講師が教える!1〜2歳からできる「節分食育」
子ども向け食育スクールを運営する食育講師の視点から、台所に立たなくても、包丁を使わなくてもできる「食育につながる楽しみ方」をご提案します。1〜2歳のお子さんにとって、食育は「五感を使う遊び」の延長線上にあります。
乾物の「変身」を観察する
乾物の最大の特徴は、水で戻すと形や手触りが変わることです。
- 海苔の観察: パリパリした乾燥海苔を少しだけ水に浸し、トロトロに変わる様子を一緒に見てみましょう。「パリパリだね」「お風呂に入ったらトロトロになったね」という声掛けが、子どもの語彙力と好奇心を刺激します。
- 干ししいたけの魔法: カチカチの干ししいたけが、水を含んでふっくらしていく様子を触らせてあげてください。香りの変化(戻し汁の匂い)を嗅ぐことも、嗅覚を育てる立派な食育です。
「パラパラ・コネコネ」のお手伝い
1〜2歳は「自分でやりたい」という意欲が芽生える時期です。
- 海苔をちぎる: 焼き海苔を指先で細かくちぎる作業は、指先の巧緻性(器用さ)を高めます。自分でちぎった海苔をご飯にかけるだけで、子どもにとっては「自分で作った特別なごはん」になります。
- おにぎりを握る: 恵方巻のように長く巻くのは難しくても、ラップを使って丸いおにぎりを作るのは1〜2歳でも挑戦できます。自分で形を作った達成感が、偏食の改善につながることも多いのです。
伝統文化を「耳」と「目」で楽しむ
恵方巻の意味を1歳児が理解するのは難しいですが、雰囲気は伝わります。「赤・緑・黄色」といった恵方巻の具材の色を見せながら、「鬼さんのパンツの色だね」「春が来る準備だよ」とお話ししてあげてください。 農林水産省の食育推進基本計画でも、共食(誰かと一緒に食べること)や、行事を通じた文化の継承が重視されています。
働くお母さんのための時短・恵方巻アレンジ
忙しい平日でも無理なく取り入れられる、1〜2歳向けの恵方巻風アイデアをご紹介します。
混ぜご飯の恵方巻風ボール
酢飯はまだ刺激が強い場合があるため、普通の白いご飯に、細かく刻んだ海苔、鮭フレーク、茹でて刻んだほうれん草を混ぜ込みます。これを一口サイズのボール状にするだけで、恵方巻に含まれる色取り(赤・緑・黒)を再現できます。
野菜の海苔和え
恵方巻の具材として定番のキュウリや高野豆腐を細かく刻み、海苔の粉末や青のりで和えます。これだけで、節分らしい磯の香りが漂う一品になります。
乾物出汁のスープ
干ししいたけを水で戻し、その戻し汁をベースにスープを作ります。乾物の深い旨味は、塩分を控えたい幼児食の強い味方です。
恵方巻を通じて「食べる楽しさ」を育む
恵方巻には、その年の福を巻き込むという意味が込められています。1歳、2歳のお子さんにとって大切なのは、特定の方向を向いて黙々と食べることではなく、お母さんの笑顔と一緒に新しい味や食感に出会うことです。
乾物は、私たちが思っている以上に離乳食や幼児食との親和性が高い食材です。
- 海苔の香ばしい香り
- 大豆のほっこりした甘み
- 干ししいたけの奥深い旨味
こうした日本の伝統的な味わいに幼少期から触れることは、将来の豊かな食生活の土台となります。
離乳食・幼児食期における節分の行事食は、無理に形を整えようとしなくて大丈夫です。管理栄養士、そして食育講師の視点で見ても、乾物を上手に取り入れ、お子さんの咀嚼能力に合わせた形状に工夫することが、最も安全で効果的な食育と言えます。
恵方巻の海苔という一つの食材から、乾物の魅力や季節の移ろいを感じる。そんなゆとりある食体験を、ぜひお子さんと一緒に楽しんでみてください。忙しい毎日の中で、行事食が「負担」ではなく、親子の絆を深める「楽しい時間」になることを願っています。

執筆:住澤陽子
管理栄養士/キッズ食育トレーナー/離乳食アドバイザー
地域に根差した食育活動への想いから、キャリアアップを目的にキッズ食育トレーナー資格を取得。双子育児の真っ最中に直面した、時間確保という大きな課題を克服し、自分のペースで学び続け、全国の仲間との出会いと、子どもたちや家族の笑顔との出会う。現在は子どもの食育に特化した活動を展開。管理栄養士としての専門知識と、食育スクールでの経験、子育ての実体験を活かした子育中のママに寄り添う視点が評価されている。