「うちの子、食べたこともないのに『いらない』って言うんです……。」

食育スクールや食育講座で、保護者の方からよくいただく相談の一つです。せっかく作った料理を、ひと口も食べずに「嫌い」と言われると、悲しくなりますよね。その気持ちはよく分かります。

でも、子どもの食わず嫌いは、叱ったり無理に食べさせたりしなくても大丈夫です。私は、食わず嫌いを直すきっかけは「楽しい」「ワクワク」からも生まれると感じています。この記事では、食育スクールのレッスンで実際にあった子どもたちの変化をもとに、家庭でできる工夫をご紹介します。

東京都大田区久が原で子どもの食育スクール「青空キッチン」を主宰している、食と学ぶと 代表・薬剤師の石井千賀子です。秋は、店先においしい食材がたくさん並ぶ季節ですね。新しい食材に出会うチャンスが増える今の時期に、ぜひ読んでいただけたらうれしいです。

この記事のポイント
・小学生の食わず嫌いは、初めてのものへのドキドキから生まれることも多く、「わがまま」だけではありません。
・食材に触る、切る、量るなどの「ワクワク」する体験が、食わず嫌いを変えるきっかけになります。
・食べられなかったときも、「どんなところが苦手だった?」と聞くことで、子どもの考える力が育ちます。

大人にも「そこまで好きではないもの」はありますよね

「好き嫌いはよくない」と分かっていても、大人にも苦手な食べ物はあるものです。食べられないわけではないけれど、自分からはあまり選ばない。そんな食材が、誰にでも一つや二つあるのではないでしょうか。

同じ食材でも、料理の仕方で感じ方が変わることもあります。「煮込んであるといいけれど、生だとちょっと苦手かも」。そんな経験に、思い当たる方も多いと思います。

子どもの好き嫌いも、大人と同じです。好きではないものがあるのは、ごく自然なことです。だから私は、「好き嫌いをゼロにすること」よりも、「新しいものに出会ったときに、一歩踏み出せること」を大切にしています。

小学生の食わず嫌いとは?「嫌い」と決める前のドキドキ

食わず嫌いとは、まだ食べたことがないのに、見た目や名前、思い込みから「嫌い」と決めてしまうことです。食べてみて「苦手」と感じた好き嫌いとは、少し違います。

人は、初めて口にするものに慎重になりやすいと言われています。見たことのない色や形、聞いたことのない料理名は、子どもにとって「よく分からないもの」です。よく分からないものを口に入れるのは、大人が思う以上に勇気がいることなのです。

小学生になると、「これは好き」「これは嫌い」という自分なりの基準も育ってきます。基準がある分、知らないものには「えー」と言いたくなることもあるのではないでしょうか。

食わず嫌いは、「わがまま」ではありません。新しいものへの、子どもなりの心の準備の時間なのだと思っています。

子どもが知らない料理に「えー」と言うのは、なぜ?

子どもが知らない料理に「えー」と言うのは、新しいものへのチャレンジが、とても大変なことだからです。

「どうして、食べる前から嫌って言うの?」そう思ったことはありませんか。

青空キッチン大田区久が原校で、青梗菜(チンゲンサイ)とじゃがいものポタージュを作ったときのことです。レッスンの最初、子どもたちは食べたことのない料理に、こんな声をあげていました。

「えー、これ絶対おいしくない」
「えー、おれ嫌い」
「えー、やだ、絶対のまない」

まさに「ネガティブキャンペーン」で盛り上がっている状態です。食べたことのないポタージュは、子どもたちにとって「よく分からないもの」だったのでしょう。しかも、緑色ですからね・・・(笑)

何をするにも、新しいものにチャレンジするのは、すごく大変なことです。大人でも、初めての場所や初めての仕事には緊張しますよね。子どもにとっては、初めての料理も同じです。

だから私は、子どもの「えー」をすぐに否定しないことを大切にしています。「初めての味はドキドキするよね。」と受け止めるだけで、子どもの気持ちは少しやわらぎます。

「ワクワク」が食わず嫌いを変えるきっかけになる

ネガティブキャンペーンで盛り上がっていた子どもたち。でも、ここから始まる調理の時間が、ワクワクのつまった時間になります。

自分で青梗菜を触る。「3cmってどのくらいだろ?!」と考えながら切る。じゃがいもを、一生懸命力を入れて切る。「360mlの目盛りってどこだろ!?」と、お友だちと協力しながら牛乳を量る。材料を鍋に入れる。

そして、ミキサーのスイッチを入れると、想像以上の音に驚いて、また盛り上がります。食べる前のこの時間こそが、子どもたちにとっての「ワクワク」です。

人は、自分で関わったものに愛着を持ちやすいと言われています。自分で触って、切って、量って、混ぜたスープは、もう「よく分からないもの」ではありません。「自分が作ったスープ」に変わるのです。

食材に触れる時間は、子どもにとって「知る」時間でもあります。青梗菜の葉のやわらかさ、じゃがいもの固さ、牛乳の量。一つひとつを自分の手で確かめることで、ドキドキが少しずつワクワクに変わっていきます。

「おいしくない」と言ったら失敗?

「おいしくない」と言ったからといって、失敗ではありません。

ポタージュができあがって飲んでみると、「案外おいしい、おかわりちょうだい!」となる子がいます。最初の「えー」が、うそのような変わりようです。

一方で、やっぱり飲めない子もいます。でも、そんな子たちからも、こんな声が聞こえてきました。

「うーん、ドロッとしてるのがあんまりかな」
「うーん、じゃがいもが強すぎ!」
「うーん、甘すぎ!もう少しお塩足したい!」

「絶対おいしくない」と決めつけていた子が、自分の舌で味わって、「どこが」「どう」苦手なのかを言葉にしています。食感なのか、味の強さなのか、塩加減なのか。自分なりに考えて、次はこうしたいという工夫まで出てきました。

食べられたかどうかだけを見ると、「飲めなかった」で終わってしまいます。でも、食わず嫌いだった子が、ひと口飲んで理由を考えた。それは、とても大きな一歩です。

だから私は、「全部食べられたか」よりも、「チャレンジしてみたこと」と「自分の言葉で伝えられたこと」を大切にしています。

食わず嫌いを直すには、まず何から始めればいい?

食わず嫌いを直すには、まず「楽しい」「ワクワク」から始めることです。

「ひと口でいいから食べなさい」と言われると、子どもはますます身構えてしまいます。食べる前から「嫌な時間」になってしまうと、新しい味へのドキドキは大きくなるばかりです。

反対に、「楽しい」「ワクワク」からスタートすると、子どもは一歩を踏み出しやすくなります。材料を触る、切る、鍋に入れる。食べる前に、そんなワクワクする時間を作ることが、食わず嫌いを変えるきっかけになると私は考えています。

声かけも、少し変えてみてください。「なんで食べないの?」ではなく、「どんな味がしそう?」と聞いてみる。「食べられてえらいね。」ではなく、「挑戦してみようと思ったんだね。」と伝えてみる。それだけでも、子どもの気持ちはずいぶん軽くなります。

なお、食べられるものが極端に少ない、体重や体調が気になるといった場合は、ひとりで抱えずに、かかりつけの医師や薬剤師に気軽に相談してくださいね。

今日からできる、家庭での5つの工夫

① 食材を触ってみる
料理の前に、苦手そうな食材を子どもの手にのせてみましょう。「葉っぱはどんな手ざわり?」「においはする?」と聞くだけで、食材が身近になります。

② 「3cmってどのくらい?」と考えながら切ってみる
包丁が使える年齢なら、長さを決めて切ってもらいましょう。ものさしで測ってから切るだけで、作業がちょっとした実験に変わります。「ぴったり3cmにできたね。」と、できたことを言葉にして伝えてみてくださいね。

③ 計量カップで量ってもらう
牛乳や水を量るのは、小さな子どもにもできるお手伝いです。「目盛りはどこかな?」と一緒に探すと、自然と会話が生まれます。

④ 鍋に入れる・スイッチを押すのは子どもの役目にする
材料を鍋に入れる、ミキサーのスイッチを押す。そんな「最後のひと押し」を任せるだけでも、子どもにとっては「自分が作った」という実感になります。

⑤ 食べたあとに「どんな味だった?」と聞いてみる
食べられなくても大丈夫です。「どんなところが苦手だった?」「どうしたら食べやすくなりそう?」と聞いてみましょう。子どもが理由を話せたら、それだけでも十分です。

全部を一度にやる必要はありません。週末に一つだけ試してみる。それだけでも、食卓の空気は少しずつ変わっていきます。

おわりに

薬剤師として体と食のつながりを見つめ、食育実践家として子どもたちと一緒に料理をする中で、私が大切にしていることがあります。それは、新しいものへのチャレンジを、「楽しい」「ワクワク」から始めることです。

新しいものにチャレンジするのは、子どもにとっても大人にとっても、すごく大変なことです。だからこそ、最初の一歩が楽しい体験であってほしいと願っています。

自分で触って、切って、量って、作ってみる。そして、味わったことを自分の言葉で伝える。食わず嫌いを乗り越える小さな経験は、これから出会うたくさんの「初めて」に向き合う力につながると信じています。

もしも、好き嫌いの克服をもう少し具体的に知りたい。家庭でできることってどんなことがあるんだろう?
そう思ってくださったらば、(社)日本キッズ食育協会のキッズ食育トレーナー体験講座もおすすめです。

まとめ

小学生の食わず嫌いは、新しいものへのドキドキから生まれることが多く、「わがまま」ではありません。食材に触る、切る、量るといった「ワクワク」する時間が、食わず嫌いを変えるきっかけになります。食べられなかった日も、理由を言葉にできたなら、それは大切な一歩です。すぐに食べられなくても大丈夫。焦らなくても大丈夫です。食と学ぶとは、これからも子どもたちの「初めて」を、楽しい時間にするお手伝いをしていきます。

よくある質問

Q. 小学生の食わず嫌いは、無理にでも食べさせたほうがいいですか?
A. 無理に食べさせるより、「楽しい」「ワクワク」から始めることをおすすめします。食材に触る、切る、量るなど、料理に関わる時間を作ることで、子どもは一歩を踏み出しやすくなります。

Q. 食わず嫌いの子が、料理をしても食べられなかったときはどうすればいいですか?
A. 「どんなところが苦手だった?」と理由を聞いてみてください。青空キッチンのレッスンでも、「ドロッとしてるのがあんまりかな」のように、自分の言葉で味を伝えられるようになる子がいます。

Q. 青空キッチンはどこで、何歳から通えますか?
A. 東京都大田区の青空キッチン大田区久が原校・大森校で開講しており、3歳から小学6年生までの子どもたちが通っています。体験レッスンも随時受け付けていますので、お気軽にどうぞ。


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苦手な食材も、自分で触って作ってみると、見え方が変わります。青空キッチン大田区久が原校・大森校では、幼児から小学生までの子どもたちが、「食」を教材に考える力・生きる力を育んでいます。体験レッスンを随時受け付けています。
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食と学ぶとでは、延べ8,000名の子どもたちを指導してきた実績と薬剤師としての医療の視点をいかし、食育セミナー・親子イベントの企画運営、講演、コラムの執筆・監修を承っています。
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この記事を書いた人

石井 千賀子(いしい ちかこ)
食と学ぶと 代表/子どもの食育スクール「青空キッチン」大田区久が原校 主宰(2019年〜)/薬剤師

病院薬剤師としての経験と子育ての経験から、「食」を通して子どもの考える力・生きる力を育む活動をしている。延べ8,000名の子どもたちを指導し、生徒120名のスクールに成長。協会大賞など4賞を受賞。キッズコーチングの手法を学び、子どもの気持ちに寄り添う声かけをレッスンに取り入れている。AERA Woman スペシャルサポーター(第2期)。AERA、AERA with Kids、InRedなどの雑誌やJ:COMでも活動が紹介されている。